シンガポールの医療システムに学ぶ(1)

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シンガポールの病院を視察してきました。

高度な医療技術の提供と財政面での効率性を両立させたシンガポールの医療制度は、世界でもっとも成功したヘルスケア・システムの1つであるといわれています。

このようにグローバルな評価を得ているのは、シンガポールが小国という利点をいかして柔軟かつ弾力的に経済政策や開発を進めるとともに、政府が強いリーダーシップを発揮して医療システムを整備してきたことが大きな理由です。米国のように市場原理に任せきった医療システムではなく、国家の責任と明確なビジョンに基づいてさまざまな施策を推進し、美しく統制されたシンガポールの医療システムは、わが国の今後の医療のあり方を考える上で参考とすべきことが多いように思いました。

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患者満足度調査はモニタリングが重要

職員満足度に比べて、患者満足度の調査結果は、正直なところ病院間での格差があまりはっきりとは出現しません。程度の差はありますが、大多数の患者は「治療結果に満足」し、「医師やスタッフに感謝」しているのです。

患者満足度は、受けた医療の内容や対応したスタッフだけでなく、その人の疾患の程度や経済状態、そもそもの性格や価値観によって大きく左右される主観的なものです。また、医療自体が情報の非対称性が強いことや、社会保障制度についての理解が不十分な患者も多いため、評価者としての患者教育の必要性も感じています。個々の病院の経営努力やスタッフのガンバリがある程度は反映されているとは言え、提供されている『医療の質』を病院間で客観的に評価するために完全に信頼できるツールかどうかと問われると、残念ながら現在の患者満足度調査だけでは不十分だとお答えしています。

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職員満足度調査はベンチマークが有効

職員満足度調査を実施する機会が増えるにつれて、職員満足度調査のベンチマーキングは私が事前に考えていた以上に病院のマネジメントに有効なツールだという手応えを感じています。

職員満足度の調査結果は、他の病院と比較することによってその病院の強みと弱み、職員のモチベーションの状況が極めてはっきりとした形で可視化されます。職員の方々も協力的で真面目にアンケートに回答していただけるため、調査結果の信頼性も高く、報告時に「うちの病院は違うよ」というような否定的な反応をいただくこともまずありません。

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職員満足度と患者満足度

「患者満足度を高めるには、職員満足度を高める必要がある」という話を耳にしたことがある方も多いと思います。

  1. 病院の職員が自分の仕事や処遇に満足していなければ、
  2. 患者さまの立場に立った医療やサービスを提供できず、
  3. 結果的に患者満足度を高めることはできない。

このようなシナリオは一見すると筋が通っているように思いますが、はたして本当にそんなに単純に考えても良いものでしょうか?

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大銀行の組織運営

私はかつて都市銀行の本部で営業部店の業績評価を行っていました。この仕事は、目標や評価ポイントの置き方ひとつで数万人の銀行員の半年間の思考や行動パターンが変わるほど重大な責任のある仕事でした。実際に、自分がつくったスプレッドシートですべての融資担当者が顧客採算を計算したり、本部が通知するガイドラインや評価体系に従って大きな組織が一糸乱れぬ動きをするのは、さながら軍隊の中央司令室にでもいるような錯覚さえ抱きました。

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医療機能情報公表制度

誤解を招くかもしれませんが、せっかくMBAやMHAなどで経営に関する勉強を行っても、現在の日本の医療機関の経営環境下でその成果や能力を発揮することは困難だと思います。国による各種規制や行政指導が色濃く残り、国民皆保険制度による価格統制経済のもとでは、決められたルールに則って組織を管理するための能力や、質を落としてでもコストダウンを図るノウハウばかりが求められ、経営者の能力はそれほど問われてきませんでした。

しかし、2007年4月からの第5次医療法改正を境にして、日本の医療経営環境は大きく変わろうとしています。経営者としての能力が求められる時代が到来しようとしています。

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バンコクの病院を視察して

バムルンラード病院のロビー

以前から気になっていたバンコクの病院の視察に行ってきました。国際的にも有名なバムルンラード病院バンコク病院、バンコク病院系列のサミティヴェ-ト病院など、タクシン前首相が推進した「メディカルツーリズム政策」の流れにも乗って今や世界中から患者を集めるようになった先進的な民間病院を実際に訪問し、各病院の幹部ともディスカッションをさせていただくことができました。

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アメリカンドリーム

私が以前勤務していた医療法人は、米国での研修プログラムを開催していました。派遣されるのは医師、看護師、コメディカル、事務部門を問わず経営への参画が求められる幹部職員で、はじめにハワイで2週間ほどの入門研修を受け、その後各自のテーマに沿って米国各地の病院や企業などに派遣されて2ヶ月程度のトレーニングを積むというユニークなプログラムです。

私も以前この研修に参加させていただき、米国の医療制度や病院経営の光と影の部分を目の当たりにするとともに、日本の医療界や病院の目指すべき方向をじっくりと考える非常に貴重な経験をさせていただきました。ケアレビューという会社を起業して、日本の医療や病院経営の質を高めるための取組みを始めのも、このときの経験が大きな影響を与えています。

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医療界の不思議

東京大学大学院工学系研究科の飯塚悦功教授は工業分野の品質管理の専門家として高名な先生で、最近は医療界でも「患者適応型パス」の開発を中心になって進められています。今回は、飯塚先生の講演の中から、「医療界の不思議」という興味深い話をご紹介したいと思います。

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入院期間と患者満足度

同じ人でも、自分の置かれた状態によって価値感や優先順位は変化します。このことを、私たちの調査データを使って具体的に説明します。入院患者の場合、短期入院の方も長期入院の方もいます。それぞれ患者さんと病院とが関わる時間が相当違うのですが、それでも患者満足度に影響を及ぼす要因が同じなのかという疑問が出てきます。そこで、私たちは入院期間によって患者満足度に及ぼす要因の違いを回帰分析により検討してみました。

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