急性期病院の品質(医療の質)管理状況に関する調査結果について

弊社では、急性期病院の品質(医療の質)管理状況に関する調査を実施しましたので、調査結果を報告させていただきます。

この調査は、急性期病院の診療実績比較サイト【病院情報局】(http://hospia.jp/)で情報提供している全国1,500あまりの急性期病院を対象として、「治療結果の分析」「患者満足度調査」「職員満足度調査」の実施状況を尋ねることにより、病院の品質管理体制の実態を調査したものです。

調査方法は郵送によるアンケート調査。調査期間は2010年2月1日~3月10日。有効回答は472病院から得られました。(回答率30.3%)

調査結果の概要

(1) 品質(医療の質)の管理状況

「患者満足度調査」は9割以上の病院で実施されていますが、「治療結果の分析」や「職員満足度調査」は半数以上の病院では実施されていないことが明らかになりました。

実施サイクルで見ると、毎月継続的な管理が行われている病院の割合は、「治療結果の分析」では17%、「患者満足度調査」では6%にとどまっています。また、「職員満足度調査」を毎年実施している病院は20%にとどまっています。

調査結果1

(2) 品質(医療の質)に関する情報提供の実施状況

調査や分析の結果について、病院のホームページで情報提供している病院の割合は、「治療結果」は9%、「患者満足度」は10%、「職員満足度」は1%にとどまっています。

病院内での情報提供を合わせると、「患者満足度」は8割弱の病院で情報提供されていますが、「治療結果」については7割近くの病院で情報提供が行われていないことがわかりました。

調査結果2

(3) 調査回答病院の規模

今回の調査は、DPC制度(診断群分類包括評価制度)の参加病院だけを対象としています。日本全体の病院構成に比べて規模が大きい病院の割合が圧倒的に多いという特徴がありますが、ほぼDPC参加病院全体の構成割合通りの回答を得られました。

調査結果3

調査結果に関する当社考察

今回の調査は、日本の病院の中でも先進的なマネジメントが行われていることが期待されるDPC参加病院を対象としましたが、残念ながら多くの病院で管理体制面の遅れが懸念される調査結果となりました。とくに、治療結果の分析さえも行われていない病院では、品質(医療の質)改善への組織的な取組みも不十分であることが想定されます。

このような状況の背景としては、日本の医療制度では、品質(医療の質)を高めることに対する努力が診療報酬でそれほど評価されず、病院経営へのインセンティブが働かないことが最大の原因ですが、同時に、病院からの情報公開に対する社会的な関心が低いことも原因のひとつだと考えられます。

2007年度から「医療機能情報提供制度」が創設され、すべての病院は「治療結果の分析」や「患者満足度調査」を『実施しているかどうか』とともに、『調査分析結果を情報提供しているかどうか』を公表することが義務付けられましたが、一般にはこの制度の存在はまだあまり知られていません。病院の医療の質の向上を促すためにも、積極的な情報公開を求める社会からの声が高まることが期待されます。

・ 医療機能情報提供制度の概要 http://hospia.jp/wp/archives/1111/

・ 今回の調査は記名式で行いましたが、病院別の調査結果は非公開とさせていただきますのでご了承ください。