TKC出版
『Medical Practice News』
2009年2月号
今回は、職員満足度調査の中で多くの職員から寄せられた具体的なコメントを通して、医療機関の職員満足の課題を考えていきます。当社に回答が寄せられた病院職員のコメントになりますが、他の病医院においても、共通する部分は多くあると思われます。職員が働きやすい環境づくりの参考にしてみてください。
医療機関は職員の「評価」が難しい
医療機関の職員の意識の特徴として、「評価方法への不満」や「精神的な不安」が、職員の勤続意欲やロイヤルティに強い影響を与えていることが調査の結果明らかになりました。
この2点のうち、まず「評価方法への不満」について見ていきたいと思います。評価方法への不満の理由は、図表1のとおり大きく3つに分類できます。
評価方法への不満はどのような組織でも見られますが、「人事考課制度」や「成果主義」を導入している病院ほど、評価方法への不満が強く表れる傾向があるので注意が必要です。一般企業のように、「売上」や「利益」のような明快な成果指標を導入しづらい病院では、多くの職員の納得感を得られる評価制度を構築することは容易ではないようです。
これに対して、職員満足度が高い病院では、評価方法をどうするかよりも、管理職教育や人材登用の仕組みに力を入れているケースが多いようです。
形式的な評価システムで管理して、職員を枠にはめようとするよりも、1人ひとりの職員をプロとして扱い、個人の能力やプライドを尊重しつつ、「あの人に評価されるなら仕方がない」と一目置かれるような魅力的な上司を育て、要所に配置することが求められているのだと思います。
不安の裏にある強い責任感
次に、「精神的な不安」について見ていきます。
図表2をみると、精神的な不安の原因が、かなり多岐にわたっていることがわかります。このように、1人ひとりが訴える精神的な不安はさまざまですが、医療者としての職業意識や責任感が強いことが、不安の背景となっているコメントが多いように思います。日々の苦労や不安の中にあっても、患者さんのために質の高い医療を提供したいと考える現場からの声には、心を打たれるメッセージも少なくありません。
人手不足や医療ミスへの不安など、日本の医療システムの問題が現場にしわ寄せられる中で、職員のモチベーションを保つのは極めて困難です。しかし、そのような不満や改善要望を吸い上げる仕組みがないような病院では、優秀なスタッフの定着が望めないことも事実です。
職員の不満や改善要望から目をそむけずに、自院の現状を正しく把握し、地域における自院の存在意義や将来ビジョンを示すとともに、職員と目線を合わせて着実に改善に取り組む姿勢や覚悟を伝えることこそが、病院長に求められるリーダーシップのあり方だと思います。