急性期病院の差額ベッド料に関する調査結果について

弊社では、急性期病院の「差額ベッド料(※)」に関する調査を実施しましたので、調査結果を報告させていただきます。

この調査は、病院や病室を選択する際の参考となる情報提供を目的として、弊社運営の【病院情報局】(http://hospia.jp/)で情報提供している全国1,556の急性期病院のうち、各都道府県の医療機能情報提供サイト上で差額ベッド料の対象病床数を確認できた1,399病院のデータを集計したものです。

※「差額ベッド料(室料差額)」とは
特別の療養環境を提供する病室への入院の際に、健康保険適用の範囲外で患者に請求される費用。料金は病院が自由に決めることができますが、各病院の差額ベッド数の割合は総病床数の50%(公立病院は30%)以内と決められています。なお、患者の自由な選択と同意に基づくことが前提のため、病院側の都合や患者の同意なしに差額ベッド料を請求することはできません。

調査結果の概要

(1) 差額ベッド料が必要な病床の割合

今回の調査対象病院(全国約50万床)のうち、差額ベッド料が必要な病床は総病床数の18.2%(約9.1万床)にとどまり、全体の8割以上(約40.9万床)の病床では差額ベッド料が不要であることがわかりました。

病院毎の差額ベッド数の割合で見ると、「10%以上~20%未満」の病院が36.8%と最も多く、次いで「20%以上~30%未満」の病院が24.0%、「10%未満」の病院が19.7%と続いています。差額ベッドが必要な病床数が「30%以上」を占める病院の割合は、全体の16.0%にとどまっています。

差額ベッド料1

また、差額ベッド料が必要な病床の割合を都道府県別に見ると、都市部と地方との間にそれほど明確な傾向の違いは見られませんでした。最も割合が高いのは愛媛県の26.8%で、千葉県(25.9%)、東京都(24.9%)が続きました。最も割合が低いのは沖縄県の4.1%で、佐賀県(9.3%)、島根県(10.4%)が続きました。

差額ベッド料2

(2) 差額ベッド料の料金水準

1日あたりの差額ベッド料の水準は、各病院が設定している最低料金の全病院平均は4,015円、最高料金の全病院平均は14,980円でした。

都道府県別の平均値で見ると、都市部と地方との間には大きな差が見られます。最低料金が最も高いのは東京都の6,097円で、最も低い福島県の2,032円に比べて、3.0倍の開きがありました。

差額ベッド料3

また、最高料金が最も高いのは東京都の26,875円で、最も低い富山県の3,587円に比べて、7.5倍の開きがありました。

差額ベッド料4

調査結果の当社考察

「8割以上の病床では差額ベッド料は必要ない」という事実は、一般消費者にはあまり知られていません。民間の医療保険などでは入院した際の医療費の不安を強調する広告が多く見られますが、差額ベッド料はあくまでも快適な療養環境を希望する場合のオプション料金であり、「患者が希望しない場合には差額ベッド料を支払う必要がない」という正しい知識も合わせて広めていくことが必要です。

一方で、差額ベッド料は各病院が独自に料金を決定できるユニークな制度であり、患者のニーズに合わせて付加価値を高めることで、患者満足度を向上させることにもつながります。この意味では、医療機能情報提供制度が創設され、各病院の差額ベッド料が公表されるようになったことは大きな進歩ですが、現在開示されている情報は病室の定員と料金のみであり(一部の県を除く)、患者が差額ベッド料を支払うかどうかを判断するには限界があります。

今後は、今回の調査結果のようなマーケットデータとともに、病室の広さや設備・アメニティの充実度など、差額ベッド料に応じた療養環境の違いが明確にわかり、患者が自分の価値観や経済力に合わせて病院や病室を選択できるような、より具体的な情報提供も求められてくると考えられます。

調査方法

急性期病院の診療実績比較サイト【病院情報局】(http://hospia.jp/)で情報提供している全国1,556のDPC参加病院(DPC導入病院およびDPC準備病院)のうち、各都道府県の医療機能情報提供サイトで差額ベッド料が必要な病床数が表示されている病院を対象として、2010年4月1日現在の情報をもとに集計しました。有効サンプル数は1,399病院、カバー率は89.9%でした。

なお、各都道府県が運営する医療機能情報提供サイトは、医療法改正により平成19年度より医療機関の情報公開が義務化されたものですが、県によって開示されている情報の定義が異なることや、病院からの報告漏れや情報精度に問題のあるデータも散見される状態ですので、今回の調査結果にも不正確な情報が含まれる可能性があることをご了承ください。

・医療機能情報提供制度とは http://hospia.jp/wp/archives/1111/

・各都道府県の医療機能情報サイト http://hospia.jp/wp/archives/1135/