オランダの医療制度が欧州ナンバーワンの評価

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スウェーデンの民間医療調査機関ヘルス・コンシューマー・パワーハウス(HCP)が2008年11月に発表した「Euro Health Consumer Index 2008」によると、欧州31ヵ国の医療システム(各国の医療制度)のうち、オランダが最高の評価を獲得しました。

オランダ以下は、2位デンマーク、3位オーストリア、4位ルクセンブルク、5位スウェーデン、6位ドイツと続き、フランスは10位、英国は13位、イタリアは16位、スペインは18位で、最下位はラトビアとなっています。

この調査機関のホームページでは、大胆にも(!?)米国のオバマ次期大統領に向けて 、”Obama – take a look at the Netherlands if you want to reform the US healthcare system in a good way!” ・・・「米国の医療システム改革もオランダを見習うべきだ!」と呼びかけています。
http://www.healthpowerhouse.com/

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この調査は、2005年以来、毎年1回欧州各国の医療システムを総合的に評価しているものです。

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具体的には、

  1. 患者の権利・情報公開
  2. e-Health(ITの活用状況)
  3. 必要な治療へのアクセス(待機日数の短さ)
  4. 臨床成績(アウトカム)
  5. 治療・予防の供給量
  6. 薬剤の充実度

という6つのカテゴリー別に、それぞれ4~8項目(合計34項目)の評価指標によって国別の医療システムの充実度が得点化され、図のような詳細データも公表されています。

カテゴリー 主な評価指標 上位国
患者の権利・情報公開
  • 患者の権利を定めた医療基本法
  • 患者組織の政策決定への関与
  • 無過失補償制度
  • セカンドオピニオンを求める権利
  • カルテ開示
1.デンマーク
2.フィンランド
2.リトアニア
ITの活用状況
  • 病院情報公開(医療の質の評価を含む)
  • カルテ情報の共有
  • 処方せんの電子化
1.デンマーク
2.オランダ
2.イギリス
必要な治療へのアクセス
  • 家庭医の受診(当日中)
  • 専門医への直接受診
  • がん治療(21日以内)
  • MRI検査(7日以内)
1.ドイツ
1.ルクセンブルグ
1.スイス
アウトカム(臨床成績)
  • 心筋梗塞致死率
  • 乳幼児死亡率
  • がん5年生存率
  • MRSA感染率
  • 自殺率の低下
1.スウェーデン
2.デンマーク
2.フィンランド
2.オランダ
治療・予防の供給量
  • 白内障手術件数
  • 乳幼児予防注射実施率
  • 腎移植件数
  • マンモグラフィー検査率
  • 保険外自己負担額
1.オランダ
2.ベルギー
2.フィンランド
2.ルクセンブルグ
薬剤の充実度
  • がん新薬の承認スピード
  • 新薬へのアクセス・助成金
1.オーストリア
総合評価 1.オランダ
2.デンマーク
3.オーストリア

 

評価方法を見てもわかるように、この調査では「患者の立場で望ましい医療システム」に重点が置かれているため、あまり医療費の高い低いを問題にはしていません。しかし、オランダの医療費がGDPに占める割合(OECD基準・2004年)は9.2%で、6位のドイツ(10.9%)や10位のフランス(同10.5%)に比べても低い水準にあり、比較的効率良く質の高い医療システムが構築されていると考えられます。

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日本ではあまり知られていませんが、オランダは1980年代後半から大胆な医療制度改革に挑み続けており、他の欧州諸国の医療システムにも大きな影響を与えています。詳しくはあらためて紹介しますが、キーワードは『保険者間の管理競争の導入』です。米国のように無保険者が多く発生してしまうような放任型の自由競争ではなく、セーフティネットとしての皆保険制度は国の責任でしっかりと維持しつつも、加入する保険者を国民が選択できる仕組みを導入し、効率的でかつ質の高い医療体制の実現に向けて、各保険者がしのぎを削り合う状態をつくり出しているのです。⇒「オランダの医療制度改革に学ぶ」

オランダと言えば、失業率を減らすため真っ先にワークシェアリングを導入した「オランダ改革」が最近の国会でも話題になっていますが、世の中の環境変化に対応するために、既存のルールにとらわれず新しい仕組みを大胆に構築するのが得意な国なのかもしれません。日本もオランダの医療制度改革から学ぶべきことが多いように思います。